
バッグを中心にレザーのプロダクトを手がける、香港発のデザインブランドGRAMS28。創業者のベンジャミン・チャンさんは、デザインやブランドの方向性に深く関わっています。
欲しいものがなければ、自分でつくる。壊れやすい場所があれば、そこから考え直す。その姿勢は、バッグだけにとどまりませんでした。
ものづくりを、どう続けていくのか。その始まりと、GRAMS28のこれからについて伺いました。
機能の先にあるもの

【ベンジャミン・チャン】
GRAMS28創業者・CEO。2019年にブランドを立ち上げ、レザーグッズを軸にプロダクトを展開。経営と並行して現在もデザインやブランドの方向性に携わり、使う場面から機能や素材を考えるものづくりを続けている。
佐藤:GRAMS28はどんなブランドですか?
ベンジャミンさん: 私たちは、美しさ、使いやすさ、品質のどれか一つだけを良くするのではなく、その三つが一緒に成り立つものをつくりたいと考えています。
バッグは毎日の中で使うものなので、見た目が良くても使いにくければ意味がないし、機能だけを詰め込んでも、自分が持ちたいと思えなければ使わなくなってしまいます。
どう見えるかだけではなく、どう開くのか、何を入れるのか、持ったときにどう感じるのか。そういうところまで含めてデザインだと考え、ものづくりをしています。
GRAMS28を始める前、僕はパソコンを持ってよく移動していました。でも、機能的なバッグはどこか学生っぽく、自分の服装に合うものはとても高価だった。
自分に合うものがない。それで、「だったら自分でつくればいい」と思ったんです。
父から受け取ったもの

佐藤:その「自分でつくる」という考え方は、どこから来ましたか。
ベンジャミンさん: 父の影響は大きいと思います。自分の家族には、昔からDIYの考え方がありました。合う道具が見つからなければ、その道具自体をつくればいい。
欲しいものがないなら、作ればいい。父からそういう考え方を教わっていたので、何かをつくったり、問題を解いたりすることを怖いとは思わなかったんです。
佐藤:そこから、GRAMS28を始めるまでのことも聞かせてもらえますか。
ベンジャミンさん: 大学時代にはeBayでスクリーンプロテクターを売っていました。でも、起業を考えていたわけではなく、自分でお金を稼ぎたかっただけです。
卒業後はデザインや広告の仕事をしましたが、自分で何かをしたいという気持ちは残っていました。その後、MacBookのレザーケースをつくって販売したところ、すぐに売れ、それをきっかけに最初のブランドを始めました。
ただ、そのブランドは数年後に閉じました。香港だけを市場にしてオンラインで売ることには限界があった。そこで、プロダクトだけでなく、どこでどう届けるかも重要だと学びました。
その経験を経て始めたGRAMS28は、最初から世界に向けて考えていました。
ものが語ること

佐藤:世界に向けてつくるようになって、プロダクトとの向き合い方も変わりましたか。
ベンジャミンさん: 品質について、以前より強く考えるようになりました。GRAMS28を始めてから、世界中のいろいろなブランドを見るようになりました。
その中で、広告で伝えていることと、実際に届くものとの間に差があることもあると感じたんです。
私たちは、その逆でありたいと思っています。
大きく約束するのではなく、実際に手にした人に「思っていた以上だった」と感じてもらいたい。伝えていることより、届けるものの方が少し上であってほしいんです。
佐藤:実際にものをつくるときは、何から考えますか。
ベンジャミンさん: まず、そのプロダクトが何のためにあるのかを考えます。僕は、あまり欲張らないようにしています。たとえば3、4日の旅行に使うバッグなら、何を持っていくのか、カメラを入れるのか。使う場面を具体的にすると、必要なものと、そうでないものが見えてきます。
そうすると、美しさ、機能、品質、素材の優先順位も自然に決まってくるんです。
佐藤:GRAMS28という名前は、どこからきているのでしょうか?。
ベンジャミンさん: 映画の『21 Grams』から来ています。映画のタイトルには、「人間の魂には21グラムの重さがある」という考えが背景にあります。
私たちも、きちんと考え、手をかけてつくられたものには「魂」が宿ると考えていて、その21という数字を名前に取り入れました。
そこに7を足しています。私たちがつくるものには、特別な日にだけ使うのではなく、1週間、7日間を通して、その人の生活の中で使われる存在であってほしいという思いがあるからです。それで、21+7で「GRAMS28」になりました。
私にとって魂のあるプロダクトは、たくさん説明しなくても、そのもの自体が何かを伝えられるもの。
ただそこに置かれていても、なぜこの形なのか、私たちが何をしようとしているのかが伝わる。そういうものをつくることは、デザインにおいてとても大切だと思っています。
バッグの、その先へ

佐藤:そうした考えは、これからどんなものづくりにつながっていきそうですか。
ベンジャミンさん: GRAMS28は、バッグだけに留まらず、もっと広い意味でのデザインハウスにしていきたいと思っています。
今もコラボレーションを進めています。バッグという軸があるからこそ、その外ではもっと自由に、売れるかどうかだけではないデザインを試せる。
GRAMS28を「ストーリーテラー」のような存在にしていきたいんです。
佐藤:「ストーリーテラー」ということについて、詳しく聞かせてください。
ベンジャミンさん: 世界中のいろいろな人と一緒に何かをつくって、その人たちの物語もプロダクトの中に入れていく。そうやって、一緒に物語をつくっていきたいんです。
ただバッグをつくり続けるだけなら、できることには限りがあります。でも、もっと面白くできると思っています。なので様々なコラボレーションを増やしていき、普段ならやらないようなことも試してみたいですね。デザインハウスのようになりたいと思っています。
仕事場と、バイクと、香り

佐藤:LeiのRoom Sprayも使ってくださっていますが、普段はどんなふうに使っていますか。
ベンジャミンさん: 自宅で仕事をするスペースで使っています。香りが長く続くので、何度かスプレーすると、その場所が少し生き生きするような感じがするんです。
僕はバイクにも乗るので、ヘルメットにも使っています。走っているときに、いい香りがするのも好きですね。
編集部ノート
ベンジャミンさんの話を聞いていると、「つくる」という言葉が指すものが、少しずつ広がっていきました。
欲しいバッグがなければ、自分でつくる。壊れやすい場所があれば、そこから考え直す。使う人の時間を想像し、まだない物語を誰かとつくっていく。
そこには、使う人の時間を想像する心がありました。
つくられたものの続きは、いつも使う人の時間の中にあるのかもしれません。
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