
東京・中目黒と京都・銀閣寺に店を構える「禁断果実」。住宅街で日々通う人を迎える店と、旅の途中に立ち寄る人を迎える店。同じサンドイッチカフェでも、その佇まいは異なります。
高校卒業後の旅、アパレルでの仕事、フルーツサンド専門店での修行。篠崎光希さんに、店を持つまでの選択と、目の前のお客さんに向き合う仕事について伺いました。
暮らしのそばに、店をひらく

【篠崎光希(しのざき・こうき)】中目黒と京都・銀閣寺で、サンドイッチカフェ「禁断果実」を営む。アパレルブランド「VANQUISH」で販売員、本社での海外営業を経て、フルーツサンド専門店で修行後独立。
佐藤:まず、禁断果実について教えてください。店名も印象的ですが、どのように生まれたのでしょうか。
篠崎さん:中目黒と京都の銀閣寺にある、サンドイッチを中心としたカフェです。「禁断果実」という名前は、アダムとイブのりんごから付けました。販売しているフルーツサンドは前日に作り置きせず、その日の朝にパンとフルーツを切るところから仕込んでいます。甘いスイーツというより、軽食として食べられるものを作っています。
開業当時は中目黒の店舗の近所に住んでいたのですが、気軽に使えるカフェがなくて。自分が近所に欲しいと思える場所をつくろうと考えたのが始まりでした。
何になるかを決める前に

佐藤:禁断果実を始める前は、どのようなことをされていたのでしょうか?
篠崎さん:高校を卒業する頃に、将来何をするかを模索していた時期がありました。自分が何をしたいのか、よく分からなかったんです。ただ、世界を知りたいという気持ちは強かった。
高校生のときに憧れている人がいたので、その人の会社にメールを送って相談に乗ってもらったことがありました。そこで「本当にやりたいことがまだないなら、海外へ出て勉強してきたら」と言われたんです。
卒業と同時に、世界一周を目指してバックパッカーになりました。
その後、「VANQUISH」という、アパレルブランドの渋谷店でアルバイトとして働くことに。高校生のときに相談に乗ってもらった方が、VANQUISHを運営している会社の社長だったんです。本人には何も伝えずに、面接を受けて入りました。
働くからには、個人売上で全国1位になりたかった。
毎日働いて、数か月後に全国1位になることができました。
旅では雨漏りする場所で暮らしたこともあって、帰国したときは「どこで何をしても生きていける。
負けるわけがない」と思っていたんです。
家に帰れば屋根があって、暖かいベッドで眠れる。それがありがたくて、毎日働くことも苦ではありませんでした。
動きながら、形にしていく

佐藤:そこから、どのように飲食の道へ進んだのでしょうか。
篠崎さん:VANQUISHでは販売員を2年、その後、本社で海外営業を1年経験しました。職場の近くにフルーツサンド専門店があって、通ううちに自分でも店を持ちたいと思うようになったんです。
社長に相談して会社を辞め、専門店で1年半修行した後、中目黒で禁断果実を開きました。京都も、その社長に勧められたのがきっかけです。すぐに移住して、銀閣寺の物件で店を始めました。
考えてから動くことがほとんどなくて、やってから考えるタイプですね。
やりながら、いつも軌道修正しています。
佐藤:京都では、どのような店づくりを考えましたか。
篠崎さん:京都は、観光で来る方や海外からのお客さんに向けた店にしています。日本らしさを感じてもらえる建物で、内装も中目黒よりカラフルにしています。
中目黒は周りに住宅が多くて、ご近所の方が普段から気軽に来られる場所にしたかった。
なので、気軽さと落ち着きを重視した雰囲気にしています。
禁断果実として大切にしているブランドやコンセプトは同じですが、来てくださる方は違いますね。その場所に合わせて、店の雰囲気も変えています。
目の前の人が探しているもの

佐藤:これまでの経験で、今の仕事の支えになっていることはありますか。
篠崎さん:販売員時代、服に触れるお客さんが何を見て喜ぶのか、どんなものを欲しがっているのか、毎日反応を見ていました。
今も、コーヒーやフルーツサンドだけが目的ではないと思っています。飲んだり食べたりして、いい気分になったり、満たされたりしたい。そのために来てくれているんですよね。
だから、まずお話を聞くようにしています。
しっかり食事をしたいのか、少しだけ食べたいのか、甘いものが欲しいのか。ただ商品を売るのではなく、その人が何を求めているのかを知ること。
販売員時代に学んだことを、今でも続けています。
佐藤:お客さんとの間で、印象に残っている出来事があれば教えてください。
篠崎さん:店の上に住んでいる方が年間200日以上通ってくれて、今では一緒に旅行へ行く大親友になったことですかね。
マンションの下という立地も大きいですが、毎日10人以上は常連さんが来てくれる。
それだけでも、すごくいいなと思います。
その土地で、店を育てる

佐藤:これから、禁断果実でしてみたいことはありますか。
篠崎さん:今は、和歌山で3店舗目のオープンを計画しています。中目黒と京都に店舗を出してみて、場所が変わると、来てくれる人も店の使い方も違うんだと感じています。近所に住んでいて普段から来てくれる人と、旅行の途中で寄ってくれる人では、求めているものも違いますよね。
だから、和歌山でも、今ある店をそのまま持っていこうとは思っていません。その場所にどんな人がいて、どんなときに店を使ってもらえるのか。そこを見ながら考えていきたいです。その土地に合う形にすることで、禁断果実を楽しんでくれる人が増えたらうれしいですね。
佐藤:お店で使っていただいている、KUON Perfumed Liquid Soapについても、聞かせてください。
篠崎さん:ウッドの香りがいいなって思いました。
常連さんが、ハンドソープが変わったことに気づいて、「いい香りだね」と言ってくださったり。そういうところにも気づいてくれるんだなと思いました。
普段から来てくれる方にも、いつもと少し違う楽しみがある。手を洗ったときに「いい香りだな」と感じることも、店で気分よく過ごしてもらうことの一つなんだと思います。
編集部ノート
一着の服を探す人と、サンドイッチを選ぶ人。
扱うものは変わっても、篠崎さんが見ているのは、それに触れた人の反応でした。
手に取るものを選びながら、その先の気分を選んでいる。
香りを選ぶときにも、そんな感覚があるのかもしれません。
記事で紹介された Liquid Soap
禁断果実(中目黒 / 東京) Instagram
禁断果実(銀閣寺 / 京都) Instagram
篠崎さん Instagram
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