
ファッション誌やブランドのオウンドメディアで、言葉と編集に向き合ってきた藤井由香里さん。
その仕事の原点、本質を捉えて届けるという姿勢、そして香りのある日常について伺いました
表に出る言葉や表現の奥には、それを拾い上げ、静かに輪郭を与える人がいます。
何を選び、どう解釈し、どう届けるか。その積み重ねを記録します。
幼い頃から身近にあった“美”が、書く仕事へ

【藤井由香里(ふじい・ゆかり)】
株式会社ARCELF代表。編集者・ライター・ディレクター。東京を拠点に、VOGUE JAPANをはじめとするファッション誌やライフスタイルブランドのオウンドメディアにて、企画・取材・執筆・編集まで一貫して手がける。言葉と編集を軸に、ファッション・美容・ライフスタイル領域のコンテンツ制作やコピーライティング、ブランド開発を国内外で行う。
佐藤:今の活動について伺わせてください。
藤井さん:今は編集者・ライターとして活動しています。ファッション誌で編集や執筆に関わることもありますし、ブランドのオウンドメディアやプロジェクトで、企画から制作まで一貫して携わることも多いです。言葉と編集を軸に仕事をする中で、今は自分のブランドづくりにも少しずつ取り組んでいます。
母がファッションデザイナーだったこともあって、幼い頃からファッションやテキスタイルがすごく身近な環境で育ちました。大学でもアパレル造形学を学んで、デザインや立体裁断だけではなく、社会とファッションの関係まで含めて広く触れてきました。そういう時間が、今の自分の土台になっていますね。
その中で、ものをつくることだけじゃなくて、それを届ける側の仕事に次第に惹かれていきました。大学時代にファッションメディアでインターンを始めて、自分が書いたものが実際に発信される経験をした時に、書くことや伝えることへの強い魅力を実感して。
佐藤:どんな感覚でしたか?
藤井さん:自分の中で、何かがはっきり動いた感覚がありました。自分が取材して、編集して、つくったものが実際に世の中に出ていって、反響として返ってくる。その体験がとにかく楽しくて、「あ、これを仕事にしたいな」と強く思ったんです。今振り返ると、あの頃に今の仕事の軸ができ始めていたのかもしれませんね。
点を集め、線をえがく

佐藤:そこからはずっと、文章を書くお仕事を?
藤井さん:いえ、そうではないんです。大学卒業後は、その歴史やものづくりへの姿勢に惚れ込んでいたイッセイミヤケに就職しました。ただ、ちょうどコロナ禍の時期と重なって、お客さまにブランドの背景や想いを直接届けることが難しい状況で。
改めて自分のキャリアを見つめ直した時に、自宅でもできる仕事として浮かんだのが、学生時代に触れていた書く仕事や編集でした。知人やメディアに自分から声をかけ、副業として少しずつ再開していきました。最初は「無償でもいいので学ばせてください」とお願いし、副業として再開しました。
独立する前には、執筆や編集で生計を立てられるか、数年かけて確かめました。私の中では、これまでの経験が点として存在し、それが線になる感覚を持てた時に、初めて「次へ進みたい」という気持ちが生まれます。
過去の経験とどこかでつながるからこそ、挑戦する意味を見出せる。準備をして、自分の中で意味を持ててから動く。その積み重ねで、今があるのだと思います。
本質をどう捉え、届けるか

佐藤:仕事をするうえで、大切にしていることはありますか。
藤井さん:本質を捉えるために、できるだけ中まで入り込むことです。表面的な可愛さや魅力だけでは、メディアやコンテンツは成立しなくなっています。なぜそのブランドが支持されているのか、その背景まで読み解く必要があるんです。
同時に、情報をどう届けるかも重要です。人が本当に興味を持つことなのか、必要としていることなのか。
読み手がいて初めて成立する仕事なので、どう編集し、どう届けるかまでを常に考えています。
佐藤:今までの仕事で得てきたことが、別の仕事にもつながっている感覚はありますか。
藤井さん:すごくあります。ある取材で得た知識が別の取材視点につながったり、編集で培った視点がチームで仕事を進める時に生きていたり。新しい仕事を通して学ぶことで、別の仕事の解像度も上がっていく。さまざまな経験がつながり、互いに還元し合っている感覚があります。。
今進めているブランドづくりも同じです。見た目が素敵なだけではなく、誰かの新しい発見につながるか、意味のあるものになっているか。コンテンツ制作で考えてきたことが、そのままつながっています。
美の断片をすくい上げ、編集し、未来へつなぐ

佐藤:2026年1月に設立した株式会社ARCELFについて教えてください。
藤井さん:これまでのコンテンツ制作をチームとして広げていくことと、新しいブランドづくり。その両方を形にするために設立しました。
社名には、世の中に落ちている美の断片を、自分なりの視点で解釈・編集し、届けていきたいという想いを込めています。編集したものを、アーカイブしていく感覚に近いです。
佐藤:これから、ARCELFでどんな景色をつくっていきたいですか。
藤井さん:企業やブランドの核へチームの一員として入り、伴走できる存在になりたいです。京都で生まれ育ち、工芸に触れてきた経験を生かし、日本ならではの技術や感性、繊細さを、新しい解釈で世界へ発信するプラットフォームを築いていきたいと思っています。
自分にしか歩めないキャリアを、少しずつ形にしていきたいです。
日常に安らぎと彩りを与え、気持ちを整えてくれる香り

佐藤: ここから少し、使っていただいているLei Perfumed Liquid Soapについても聞かせてください。どんな時に手が伸びますか。
藤井さん:帰宅後、仕事の気配をほどくように手を洗う時や、少し長めにお風呂へ入りたい日に使います。洗った後は、すっきりするだけでなく、頭までクリアになるような感覚があります。香りが少し残り、そのまま自然と気持ちがほどけていく感じも好きです。
佐藤:藤井さんにとって、香りとはどのようなものでしょう。
藤井さん:一日を始める前や、気持ちを切り替えたい時、整えたい時間に自然とあるものですね。日常に安らぎや彩りを添えてくれるし、自分を少し勇気づけてくれる存在でもあると思います。
いわば“目に見えない正装”みたいな感覚です。、香りひとつで自分だけではなく、周りの空気ま変わる。
場所や人にふさわしい香りがあるだけで、受け取られ方まで少し変わる気がします。
編集部ノート
言葉を選び、意味を見つけ、届け方を考える。
藤井さんの仕事には、目に見えないものへ輪郭を与える静かな強さがありました。
目に見えないものに意識をくばること。
気持ちや空気を整えることもまた、その静かな延長にあるのかもしれません。
藤井さんの日々を整える時間に寄り添うPerfumed Liquid Soap
藤井さんInstagram:https://www.instagram.com/yukaringram/
Lei Journal
語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。
静かな重心を持つ人や空間に目を向けることで、はじめて見えてくる価値があります。
Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。
