Lei Journal
語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。
静かな重心を持つ人や空間に目を向けることで、はじめて見えてくる価値があります。
Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。
君島悠矢さん インタビュー

オーガニックドライフルーツや生ナッツの輸入販売、お米づくり、自家発電、そして音楽イベント。並べれば、少し不思議な組み合わせにも見えます。
けれど、君島さんの話を聞いていると、それらは別々の取り組みではありませんでした。
遠くの土地で惹かれたこと。自然の循環から切り離された暮らしに、どこか違和感があったこと。そして、難しいことを難しいままで終わらせず、自身の手を動かし形に変えてきたこと。
AMBESSA & COの営みには、静かで、でも確かな流れが通っていました。
旅の後に残った感覚

【君島悠矢(きみしま・ゆうや)】
AMBESSA & CO代表。オーガニックドライフルーツ、ローナッツの輸入販売をはじめ、お米づくりや自家発電、音楽イベントの企画など、食・暮らし・エネルギーを横断しながら活動。自然との循環を、思想だけでなく実践として形にしている。
佐藤:AMBESSA & COの活動の原点から伺いたいです。今はドライフルーツの販売だけでなく、お米づくりや自家発電、音楽イベントまで活動が広がっていますが、そもそも最初の始まりはどこにあったのでしょうか。
君島さん:20代の頃にバックパッカーをしていたことですね。初めて海外に出た時に、世界って広いなと思って。いろんな文化に触れながら放浪していた時間が、人生の中で一番の学びになった感覚があります。そこで得た感覚を、どこかで続けていたかったんです。
佐藤:その旅の感覚が、今の仕事につながっていったんですね。
君島さん:そうですね。明確なビジョンがあって始めたわけではなくて。なりゆきというか、旅で感じたことをつなぎ合わせていく感覚から、ノリで始まったところも大きいです。
ただ、旅の途中で出会ったものの中で、あとあとまで残るものがあった。エジプトで食べたデーツの印象が強烈に残っていて。そこからチュニジアのデグレットノールという品種に惹かれてしまいました。そこがオーガニックドライフルーツの輸入販売の原点ですね。エジプトから帰国してすぐに、生産者を自分で探し連絡して、取引を始めました。
佐藤:そこまで動かしたものは、なんだったのでしょうか?
君島さん:論理的に説明できる明確な理由はなかったのですが、味だけに惹かれたわけではありませんでした。その土地の空気感や人々の生活とか。
今振り返ると、そういう背景みたいなものが心に残ったんだと思います。
作り手でありたかったこと

佐藤:旅の感覚がそのまま仕事になっていく一方で、そこからさらに、お米づくりや農作物を育てるところまで向かわれていますよね。どのような流れがあったのでしょうか?
君島さん:海外のものを扱っていると、どうしても考えさせられる問題があって。輸入する時には、環境負荷があったり、オーガニックのものを生産するのにエネルギーが必要だったり。そこで突き詰めていくと、地産地消というか、なるべく身近なものでシンプルに暮らす方向がベストなのではないか、という考えに辿り着きました。
佐藤:輸入の仕事をしているからこそ、逆に原点へ立ち返った。
君島さん:そうかもしれないです。扱っているものの背景まで考えた時に、自分の手でも何かを作らないといけない気がしたんです。
ビジネスマンである前に、作り手でもありたいと強く思いました。
なので、お米を作ったり、農作物を育てたり、自給自足に近いこともするようになりました。輸入の仕事は経済活動として続けながら、自分の手でも作り始めてみる。小さくても、できることから始めてみたりして。 今後も、生産方法がクリアで質の高い食品の輸入は続けるものの、自分たちで生産できるものの比重を増やしていきたいです。
見えないエネルギーも暮らしの一部として

佐藤:お話を伺っていると、食べるものの話から自然にエネルギーの話へつながっていくのが印象的です。多くの人にとっては別のテーマに見えますが、君島さんの中では地続きなんですね。
君島さん:そうですね。「生きる」という活動は、総合的な視点で見ないといけないと思っています。食べるものだけではなく、その仕事を動かしているエネルギーも切り離せないんです。自分たちが扱っている商品を梱包したり、製造したりする過程で使うエネルギーも、なるべくクリーンなものがいいと思っていて。食料の自給を考えるなら、エネルギーも同じように考えないといけないなと。
佐藤:その視点も、海外経験が活きているのでしょうか?
君島さん:そうですね。自社発電から事業を回している企業を見たことが、考え方を変えるきっかけになりました。自然を破壊することなく良い生活をしようと考えると「自分でやるしかない」と感じたんです。
それで太陽光発電の仕組みを作りました。自家発電と言っても特別なことではなく、食や後世の暮らしを考えていった先に、自然と出てきた答えでした。
楽しさの先で伝わること

佐藤:アップサイクルの活動も積極的に行われていますよね。
君島さん:はい。使わなくなった冷蔵庫で人が楽しむ空間を演出する、冷蔵庫スピーカーを使って音楽を楽しむイベントを行なっています。アップサイクルしたものも、結局また捨てられてしまったら意味がない。そう考えた時に、残るのは「楽しく過ごした時間」なんじゃないかと思いました。
たまたまある日、太陽光で生み出した電気で音を出して、ミラーボールを回して、知り合いがうちの果実で仕込んでくれたクラフトビールを飲みながら食事をする、という遊びをしたんです。
その時に「これだ」という感覚を持ちました。役目を終えたものでも、考え方と人間の発想があれば、他の価値を届けられることを目の当たりにした気がして。
佐藤:そこから軽トラに載せて外へ持ち出す形にもなっていった。
君島さん:そうなんです。家と会社が一体なので、同じ場所で定期的にやるのはなかなか大変で(笑)。ある時、太陽光パネルを運ぶ時の大きいパレットが軽トラにすっぽりハマることに気づき、「これならいける」と思ってスタートすることに。
スピーカーを乗せてDJブースを持ったらぴったりで。そこから、海や山など、電源のないところでもできる形になり、東京のイベントにも呼んでいただくことが増えていきました。
口で説明すれば難しくなることを、楽しい体験を通して伝えたいんです。環境のことって、話し方によっては一気に重たくなるじゃないですか。でも、楽しいことなら人は自然と入ってこられる。だから僕は、音楽や場づくりの中で伝えたいと思っています。
自然は循環しているのに、人間だけがそこから外れちゃってる感覚があって。本来は、食べたものも、排泄したものも、終わった命も、何か別の命につながっていくはずなのに、それらのつながりを感じることが難しくなってしまっている。でも、その話を正面からすると、聞いている方も辛いし、自分もきつい。だから、楽しいことを通して少しずつ触れてもらう方が、しっくりくるんです。
火を囲む時間の中で

佐藤:最後に、普段使ってくださっているLei non electric aroma diffuserについても伺わせてください。生活の中では、どんなシーンで使ってくださってますか?
君島さん:お店で使っているのですが、明かりとして使っています。空間の速度が少し落ちる感じがあるんです。キャンドルの優しい炎と、ファンの緩やかな回転を見ていると、無心になれるんですよね。生活の中に自然と馴染みました。
佐藤:香りを広げる道具としてだけではない使い方をされている感じがします。
君島さん:外で食事をする時にも使うことが多いのですが、団欒の時間に寄り添ってくれている感覚があります。香りを広げる道具というより、火を囲む時間のそばにある感じですね。
編集部ノート
食べること、育むこと、楽しむこと。君島さんの言葉に触れていると、それぞれが別の行為ではなく、ひとつの生き方の中でつながっていることに気づかされます。
便利さの先へ進むためではなく、自分の感覚を取り戻すために手を動かすこと。そうした営みは、暮らしの速度を静かに整えてくれるのかもしれません。
君島さんが使うLei00
君島さんが代表を務めるAMBESSA & CO Instagram:https://www.instagram.com/ambessaandco/
冷蔵庫スピーカーInstagram:https://www.instagram.com/reizoko_speaker/
※Leiは、君島さんが開催する「冷蔵庫スピーカー」の活動に協賛しています。
