Lei Journal
語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。
静かな重心を持つ人や空間に目を向けることで、はじめて見えてくる価値があります。
Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。
株式会社Bijoux代表 篠原彩加さん インタビュー

どこに置くか。どこを削るか。どこで止めるか。
ビジューアートやロングネイルといった、ひと目で強さを残す仕事を続けながら、篠原さんが繰り返し口にしたのは“引き算”という言葉でした。
華やかな仕事の中で、何を残すか

【篠原彩加(しのはら・あやか)】
株式会社Bijoux代表。ネイルグッズメーカー プラスディー トップクリエイター。ネイルサロン「Nail Salon Wiz新宿」経営のほか、商品開発、プロモーション、講師活動を行う。
佐藤:まず、篠原さんの活動内容を教えてください。
篠原さん:株式会社Bijouxの代表として、新宿のネイルサロン「Nail Salon Wiz新宿」を経営しながら、ネイルグッズメーカーのプラスディーという会社でトップクリエイターを務めさせていただいています。サロンワークだけではなく、商品開発やプロモーション、セミナー登壇、製品開発を行っており、作ることと伝えることを仕事にしています。
佐藤:施術者であり、経営者であり、作る側でもある。
篠原さん:そうですね。見た目だけでいうと、すごく華やかな仕事に見えると思うのですが、私が一番大事にしているのは、むしろ引き算。ビジューアートも、ただ盛ればいいわけじゃない。
どこに何を置くか、何を削るかで、仕上がりが全然変わるんです。ネイルの製品開発にしても、成分はたくさんあるし、できることは無限にある。その中で何を残すか。
良いものを作るために、あえてやらないことを決めています。
佐藤:派手さの中に、かなり厳密な判断がある。
篠原さん:華やかさって、足し算だけで作るものじゃないんですよね。
削って、整えて、やっと立ち上がる。
ないなら、自分でつくる

佐藤:その感覚は、いつからあったんですか。
篠原さん:最初に東京で入社したのが大手のネイルサロンでした。そこで求められていたのは、マニキュア中心で、短い時間で数をこなし、商品も売る、というスタイルでした。もちろん勉強にはなったのですが、“ここでは自分がやりたい技術は深まらない”という漠然とした感覚を持ったんです。
佐藤:自分がやりたい技術とは、どんなものだったのでしょう?
篠原さん:それがビジューアートやロングネイルだったんです。当時はまだ主流ではなかったのですが、ネイリストとしての技術を存分に発揮し、お客さまに満足いただける物を提供してみたかった。
佐藤:そこから、自分のサロンをオープンされた。
篠原さん:はい。2年ほど勤めて経験を積ませていただいた後に自分のサロンをオープンしました。最初は、当時借りていた自分の部屋にネイルのスペースを作って、お客様をお呼びするというスタイルでした。実家が愛媛なのですが、月の半分は実家に戻り、友達のネイルをして生活費を作る、という時期でしたね。
東京と愛媛を行き来しながら、なんとか続けていました。
佐藤:主流ではなかったスタイルでのチャレンジでは、何が大きな壁でしたか?
篠原さん:専用のネイルパーツがなかったことです。当時は誰もしている人がいなかったので、欲しい質感や強さを表現できるものが見つけられませんでした。そこで目をつけたのが、アクセサリー。最初は気になったものを買ってきて、砕いて、ばらして、爪の上に載せていました。
既製品をそのまま使うのではなく、必要な部分だけ抜いて、別の形にしていく。
パーツがないから諦めるのではなく、ないなら自分で作ろうと思って技術とアイディアを磨いていましたね。そこから、少しずつ自分の表現に形ができてきましたね。
派手に見えるものほど、厳密なルールでできている

佐藤:お話を聞いていると、感性だけではなく、構造で考えている印象があります。
篠原さん:ビジューアートって、一見すると自由に見えるのですが、実際はしっかりとしたルールがあるんです。どこに何を置くか、色の強さをどう散らすか、抜く場所をどこに作るか。それが崩れると、途端に雑に見えてしまう。
佐藤:派手さの奥に、規律がある。
篠原さん:そうです。自分はロングネイルもしないし、キラキラしたものを身につけるタイプでもないのですが、技術者として、華やかさを作る細かな技術や感覚に惹かれてきました。ロングネイルもビジューアートも、突き詰めると本当に難しい。毎日、お客様に満足したものを提供するには、かなり高い技術と目利きがいる。
佐藤:職人気質を感じます。
篠原さん:実家が琴や三味線の販売修理をする家で、代々、商売人であり技術者でもあるんです。“ものを作ること”に対する感覚を、知らず知らずのうちに両親から学んでいたのだと思います。綺麗に見えるものほど、作り手にしっかりとした規律と意図があり、整っている。そこが、華やかさを成立させているのだと思います。
「Nail Salon Wiz新宿」でお客さまに満足いただけるものを提供する形は、ずっと考えています。
人との距離を整えながら、次の場所を考える

佐藤:これからの展望についても伺いたいです。
篠原さん:会社としては、独立してから14年間新宿に腰を据えているので、次の展開を考える時期に入っていると思っています。新宿ではないエリアに2店舗目を出したいなと。
佐藤:場所が変わることで、見えるものも変わりそうです。
篠原さん:そうなんです。今はビジューアートで知られていますが、街が変われば、また違うクリエイティブに触れる可能性もあると思っています。そこはすごく楽しみですね。
佐藤:個人としてはいかがですか。
篠原さん:20代は仕事に打ち込みすぎたので、30代の今は自分がやったことのないことにチャレンジしたい気持ちが強いです。遊びや移動の中で得たものが、結果的に仕事に返ってくる感覚もあるので。仕事だけに閉じずに生きることが、今は大切だと思っています。
佐藤:仕事と人生を、切り分けない。
篠原さん:そうですね。遊びの中からクリエイティブが生まれて、そのクリエイティブでまた仕事ができる。その循環を、これからはもっと自然に育てていきたいです。
置いた時に、場に馴染むもの

佐藤:LeiのCard Diffuserについても伺いたいです。実際に使っていただいて、どんな印象がありましたか。
篠原さん:最初にいいなと思ったのは、たくさんある置き物の中にあっても、ちゃんと馴染んでいたことなんです。存在感はあるのに、変に浮かない。置いた時に空間を壊さない印象を持ちました。
香りも同じで、よくある“ひと嗅ぎで強く残る香り”とは少し違っていた。
香水みたいに、自分に馴染んでいく感じがあったんです。強く押してくるわけじゃないのに、ちゃんと印象に残る。
一回買って終わりじゃないところもよかったです。和紙を替えたり、香りを替えたりしながら、少しずつ付き合い方を変えていける。ディフューザーって、一回置いたらそれで終わり、みたいな感覚もあると思うんですけど、これは長く関係が続いていく感じがあるんですよね。
強く押し出すわけじゃないのに、ちゃんと残る。
私はそういうものに惹かれるんですよね。仕事でも物でも、見せすぎないのに、ちゃんと強さが残るものの方が、長く好きでいられる気がします。
編集部ノート
篠原さんの話を聞きながら印象に残ったのは、華やかな仕事の裏にある、「引き算」の感覚でした。
足して目立たせるのではなく、削ることでしか表現できない美しさがあるのかもしれません。
篠原さんの日常に寄り添うcard diffuser
篠原さんInstagram:https://www.instagram.com/ayaka_shinohara_wiz/
Nail Salon Wiz新宿 Instagram:https://www.instagram.com/wiznail_0502/
