Lei Journal
語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。
静かな重心を持つ人や空間に目を向けることで、はじめて見えてくる価値があります。
Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。
株式会社hmn 代表 塚本直純さん インタビュー

今回お話を伺ったのは、映像クリエイターの塚本直純さん。
写真や映像を軸に、企業やブランドに伴走しながら、コンテンツを制作しています。
話を聞いていると、塚本さんの仕事は、何かを新しく“つくる”ことだけではないように感じられました。すでにそこにある思いや価値に目を向け、それを受け取り、形にして、外へ届けていくこと。
波紋のように、広がっていくものをつくりたい

【塚本直純(つかもと・なおずみ)】
映像クリエイター・フォトグラファー。株式会社hmn代表。映像・写真を軸に、企業やブランドに伴走しながら、プロモーションムービーやSNSコンテンツの制作を手がける。
佐藤:活動内容について教えてください。
塚本さん:写真と映像を軸に、企業やブランドと一緒にブランディングのためのコンテンツを制作しています。プロモーションムービーだったり、Instagramの企画を毎月一緒に考えて撮っていく。伴走しながら続けていく仕事が多いですね。
映像クリエイターではありますが、映像を作って納品するだけでは違う気がしていて。2025年12月に立ち上げた会社名は「hmn」としています。読みのイメージとしては「波紋」。ブランドや誰かの活動の思いや背景を、波紋のように少しずつ広げていく。その手伝いをしたいという思いで活動しています。
佐藤:映像をつくることそのものより、その先の広がりを見ている感じがします。
塚本さん:そうかもしれないです。撮影が終わった先まで見ていたいんです。ちゃんと届いているか、どう受け取られているか、何か変化につながっているか。形にすることは手段であって、その先でどう広がっていくかのほうに、ずっと興味があります。
もう一度、自分の名前で立つために

佐藤:今の塚本さんを見ていると自然と映像の人に見えますが、最初からそうだったわけではないんですよね。
塚本さん:全然ちがいましたね。もともとは、ずっとサッカーをしていました。小学二年生から大学まで本気で打ち込んでいて、プロを目指していたんです。当時は映像の道に進むなんてまったく思っていなかったですね(笑)。
サッカーの世界って、自分が90分で何をしたかがそのまま出る世界でした。チームスポーツではあるけれど、“自分の名前”で評価される感覚が強かった。だからサッカーを手放したあとも、それに代わる何かを探していたんだと思います。
就活が始まる頃にサッカーを諦めることになって、自己分析もたくさんしました。でも、きれいに職業の答えが出たわけじゃなかった。そんな中でも残ったものがあって。それは、自分の名前で仕事をすることと、大切な人に誇れる仕事をすること。その二つだけは、ずっと自分の中にありました。
佐藤:映像にはどのタイミングで出会ったんですか?
塚本さん:大学の友人がGoProで映像を撮っていて、それを見たのがきっかけなんです。そこで、「これを仕事にしよう」って思ったんです。お金はなかったけど、ローンを組んでカメラを買いました。今振り返ると、その時にはすでに「映像で生きていくんだ」と決めていました。
佐藤:整ってから進んだというより、賭けるように決めた感じだったんですね。
塚本さん:そうですね。しっかり見えていたわけじゃないけど、それでも、自分の名前でまた何かに賭けたいと思ったんだと思います。今振り返ると、あの時の決断が今につながっていたんだなと思います。
続けられなかった仕事が教えてくれたこと

佐藤:そこからは、すぐにカメラの仕事を?
塚本さん:新卒でそのままフリーになったのですが、最初から順調だったわけではなくて、一度就職もしました。安定した収入があったほうがいいだろうし、気持ちの面でも落ち着くかなと思って。
佐藤:その時期があったからこそ、見えたものもありそうです。
塚本さん:ありました。当時の仕事自体を否定することはないのですが、自分には長く続けられなかった。目の前の人のためになっている感覚が持てなかったし、これを自分の大切な人たちに胸を張って話せるかと言われると、そうではなかったんです。
佐藤:その違和感は、ごまかせなかった。
塚本さん:ごまかせなかったですね。金額の大きさよりも、誰かの課題や思いに寄り添えている感覚のほうが、自分は大切にしたかった。
たとえ金額が大きくなかったとしても、そのほうがずっと意味があると思えたので。
佐藤:その原体験が、hmnの在り方のベースになっているんですね。
塚本さん:そうですね。写真や映像だけじゃなくて、相手や世の中に必要な形を考えて、伴走していく。納品して終わりではなく、一緒に考えて、悩んで、広げていく。そういう関わり方をしたいと思うようになったのは、あの時期があったからだと思います。
聞くことからしか、形にならないものがある

佐藤:一緒に考えて、悩んで、一広げていくために、どんなことを意識して日々取り組んでいますか?
塚本さん:制限を設けずに、プロジェクトに向き合うことですかね。
最初から、自分たちの領域はここまでです、と決めない。
必要ならモデルさんに声をかけることもあるし、スタイリストさんを入れて一緒に考えることもあります。
そうやって、必要だと思ったことを、話し合いながら少しずつ形にしていくことが、好きなんだと思います。
佐藤:一緒に作っていく感覚でしょうか。
塚本さん:はい。やりがいを感じるのも、伴走した結果が、ブランドや会社にとってプラスになったと感じられる時です。数字で見えることもありますが、それだけじゃなくて、届いた実感がある時が一番嬉しいですね。
自分の中に答えがあるとはあまり思っていなくて。お客さんの中にある思いや、まだ十分に表に現れていない価値に目を向けて、それを引き出し掘り出す、解決という形にしていく感覚です。
佐藤:眠っているものを掘り出す感覚でしょうか。
塚本さん:そうかもしれないです。クリエイティブと言われますが、自分の中では、突発的なひらめきというより、積み重ねやヒアリング、そういったことのほうが近い。聞くことからしか形にならないものがあると思っています。
佐藤:あるものに目を向けて、それをどう外へ届けていくかを考える。
塚本さん:何かを突然つくり出すというより、すでにあるものに目を向けて、それを解釈して、形にして、届けていく。見えるものの手前にある、まだ輪郭になっていないものをどう受け取るか。たぶん、ずっとそこに惹かれているんだと思います。
香りが、その場の記憶をつくる

佐藤:Leiのcard diffuserも使ってくれていますが、最初に惹かれたのはどこでしたか。
塚本さん:佇まいに惹かれましたね。和紙を使っているところや、構造が空間にやさしく寄り添ってくれる感じがして。置く場所の陽の光やライトの雰囲気が変わると、また違う印象になるのが使っていて楽しいです。
佐藤:どんな空間で使ってくださっていますか?
塚本さん:毎日通る棚の上に置いています。そこを通る時にやさしく香る感じが、次の動きへの良いきっかけになっているというか。card diffuser自体も見ていて心地が良くなるんです。香りとして使っている感覚よりも、自分の過ごしやすい空間づくりのインテリアという感覚が強いですね。
佐藤:何を置くか、どんな香りがするかって、場の温度や過ごしやすさを左右することが多いですよね。
塚本さん:些細なことかもしれないですが、置いてあるものや香りって「その空間にまた戻りたいと思うか」を決めてしまうと思うんです。飲食店に入った時でも、味はすごく美味しいのに、入った瞬間の匂いで印象が決まってしまうことがある。いくら見た目が整っていても、香りが合っていないと、なんか違うなって心に引っかかる。
逆に、ふとした香りで落ち着くこともあるし、また頑張れるきっかけになったりする。何かから何かに切り替わる、その途中の時間にあるといいなって思っています。
編集部ノート
すでにそこにあるものを、どう受け取り、どう届けるか。
まだ輪郭になっていないものに目を向けること。
香りもまた、目には見えないまま、空間や人の印象を静かに形づくっていくものなのかもしれません。
塚本さんが日々の空間で使っている Lei card diffuser
塚本さんInstagram:https://www.instagram.com/tkamoto/
