点をつなぎ、自分の輪郭をつくる|編集者・ライター 藤井由香里さん

Lei Journal

語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。

静かな重心を持つ人や空間に目を向けることで、はじめて見えてくる価値があります。

Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。

藤井由香里さん インタビュー

窓辺の自然光が差し込む室内で、椅子に座りながら話す藤井由香里さんの横顔

表に出る言葉や表現の裏には、必ずそれを拾い上げ、輪郭を与える人がいます。
何を選び、どう解釈し、どう届けるか。
その積み重ねが、ひとつの輪郭に。

幼い頃から身近にあった“美”が、書く仕事へ

コンクリート壁の前に立ち、やわらかな表情を見せる藤井由香里さんのポートレート

【藤井由香里(ふじい・ゆかり)
株式会社ARCELF代表。編集者・ライター・ディレクター。東京を拠点に、VOGUE JAPANをはじめとするファッション誌やライフスタイルブランドのオウンドメディアにて、企画・取材・執筆・編集まで一貫して手がける。言葉と編集を軸に、ファッション・美容・ライフスタイル領域のコンテンツ制作やコピーライティング、ブランド開発を国内外で行う。

佐藤:今の活動について伺わせてください。

藤井さん:今は編集者・ライターとして活動しています。ファッション誌で編集や執筆に関わることもありますし、ブランドのオウンドメディアやプロジェクトで、企画から制作まで一貫して携わることも多いです。言葉と編集を軸に仕事をする中で、今は自分のブランドづくりにも少しずつ取り組んでいます。

佐藤:そこに至るまでの背景も気になります。

藤井さん:母がファッションデザイナーだったこともあって、幼い頃からファッションやテキスタイルがすごく身近な環境で育ちました。大学でもアパレル造形学を学んで、デザインや立体裁断だけではなく、社会とファッションの関係まで含めて広く触れてきました。そういう時間が、今の自分の土台になっていますね。

その中で、ものをつくることだけじゃなくて、それを届ける側の仕事に次第に惹かれていきました。大学時代にファッションメディアでインターンを始めて、自分が書いたものが実際に発信される経験をした時に、書くことや伝えることへの強い魅力を実感して。

佐藤:どんな感覚でしたか?

藤井さん:自分の中で、何かがはっきり動いた感覚がありました。自分が取材して、編集して、つくったものが実際に世の中に出ていって、反響として返ってくる。その体験がとにかく楽しくて、「あ、これを仕事にしたいな」と強く思ったんです。今振り返ると、あの頃に今の仕事の軸ができ始めていたのかもしれませんね。

点を集め、線をえがく

木のテーブルに置かれた『VOGUE JAPAN』2026年3月号と4月号

佐藤:そこからはずっと、文章を書くお仕事を?

藤井さん:いえ、そうではないんです。大学卒業後は、その歴史やものづくりへの姿勢に惚れ込んでいたイッセイミヤケに就職しました。ただ、ちょうどコロナ禍の時期と重なって、お客さまにブランドの背景や想いを直接届けることが難しい状況で。

そこで改めて自分のキャリアを見つめ直した時に、自宅でもできる仕事として浮かんだのが、学生時代に触れていた書く仕事や編集だったんです。

佐藤:そこから、どのように動いていったのでしょう?

藤井さん:知人やメディアに自分から積極的に声をかけて、副業として少しずつ再開していきました。最初は「無償でもいいので学ばせてください」とお願いして、経験を積ませていただくところからのスタートでした。

佐藤:ずっと心の奥にはあったんですね。

藤井さん:そうですね。フリーランスになる前にも、ちゃんと執筆や編集で生計を立てられるかを確かめたくて、数年ほど副業として続けながら準備をしていました。

私の中では、これまでやってきたことが点としてあって、それが線になる感覚が持てた時に、初めて「やってみたい」という気持ちが生まれるんです。自分が持っているものがまったく活かせないことにはあまり心が動かなくて。過去の経験とどこかでつながるからこそ、挑戦する意味を見出せるのだと思います。

だからこそ、自然と次の一歩が出るというか。準備をして、自分の中で意味を持ててから動く。その積み重ねで今がある気がしますね。

本質をどう捉え、届けるか

工房で、職人のそばに立ちながら静かに視線を向ける藤井由香里さん

佐藤:今の活動の中で、日々意識していることはありますか。

藤井さん:本質を捉えるために、できるだけ中まで入り込むこと、でしょうか。メディアやコンテンツ制作って、表面的な可愛さや魅力だけでは成立しなくなってきていると感じます。なぜそのブランドが支持されているのか、その背景まで読み解かないといけない。

佐藤:表面だけじゃなくて、その奥まで見にいくんですね。

藤井さん:そうですね。同時に、情報をどう届けるかも重要です。人が本当に興味を持つことなのか、必要としていることなのか。読み手がいて初めて成立する仕事なので、どう編集し、どう届けるかまでを常に考えています。

佐藤:今までの仕事で得てきたことが、別の仕事にもつながっている感覚はありますか。

藤井さん:すごくあります。ある取材で得た知識が別の取材視点につながったり、編集の仕事で培った視点がチームで何かを進める時の進行や判断に生きていたり。さまざまな経験が、別々ではなく少しずつつながり還元し合っている感覚。

佐藤:点でやってきたことが、あとからつながっていく。

藤井さん:本当にそうです。新しい仕事を通して新しいことに出会い、それを学ぶことで、別の仕事の解像度も上がっていく。そういう循環が、この仕事の面白さのひとつだと思っています。

それは今進めているブランドづくりでも、すごく近い感覚があります。ただ見た目が素敵、可愛い、だけでは、自分がやる意味はあまりないと思っていて。誰かの新しい発見につながるかとか、ちゃんと意味のあるものになっているかとか。コンテンツ制作で考えてきたことが、そのままつながっている感じがあります。

美の断片をすくい上げ、編集し、未来へつなぐ

グリーンに囲まれた夜のラウンジで、やわらかな表情を見せる藤井由香里さん

佐藤:今年の1月に法人化されたと伺いました。

藤井さん:はい、2026年の1月に株式会社ARCELFを設立しました。今までやってきたコンテンツ制作の仕事を、チームとして少しずつ広げていきたいという思いと、新しく進めているブランドづくり、その両方があります。

佐藤:社名にも意味が込められているのでしょうか?

藤井さん:はい。世の中に落ちている美の断片を、自分なりの視点で解釈・編集し、世の中に届けていきたい、という想いを込めています。編集したものを、アーカイブしていく感覚に近いです。

佐藤:これから、ARCELFでどんな景色をつくっていきたいですか。

藤井さん:コンテンツ制作では、企業やブランドの核のところに、ちゃんとチームの一員として入って、一緒に伴走できる存在になれたらと思っています。京都で生まれ育ち、幼い頃から工芸に触れてきた経験を生かし、日本ならではの技術や感性、繊細さを、自分たちなりの新しい解釈でグローバルに発信するプラットフォームを築いていきたいです。

自分にしか歩めないキャリアを、少しずつ形にしていけたらと思っています。

日常に安らぎと彩りを与え、気持ちを整えてくれる香り

Lei Perfumed Liquid Soapの使用写真

日々、言葉の輪郭を整える仕事をしている藤井さんにとって、香りもまた、気持ちや空気を整えるための感覚のひとつなのかもしれません。

佐藤: ここから少し、使っていただいているLei Perfumed Liquid Soapについても聞かせてください。どんな時に手が伸びますか。

藤井さん:帰宅後、仕事の気配をほどくように手を洗う時や、少し長めにお風呂に入りたい日に使うことが多いです。洗ったあと、すっきりするだけじゃなくて、頭までクリアになるような感覚があって。香りが少し残ってくれるので、そのまま自然と気持ちがほどけていく感じがあります。

佐藤:藤井さんにとって、「香り」とはどのようなものでしょう。

藤井さん:一日を始める前や、気持ちを切り替えたい時、整えたい時間に、自然とあるものですね。日常に安らぎや彩りを添えてくれるし、自分を少し勇気づけてくれる存在でもあると思います。いわば“目に見えない正装”みたいな感覚で、香りひとつで自分だけじゃなく、周りにある空気まで少し変わる気がします。

場所や人にふさわしい香りがあるだけで、受け取られ方まで少し変わる気がします。

編集部ノート

言葉を選び、意味を見つけ、届け方を考える。
藤井さんの仕事には、目に見えないものへ輪郭を与える静かな強さがありました。

目に見えないものに意識をくばること。
気持ちや空気を整えることもまた、その静かな延長にあるのかもしれません。

藤井さんの日々を整える時間に寄り添うPerfumed Liquid Soap

藤井さんInstagram:https://www.instagram.com/yukaringram/

この記事を書いた人

Nobuaki Sato

Brand Manager of Lei
He was born in Kanagawa, Japan.
A polyglot fluent in Japanese, English, Italian, Spanish, French, and Portuguese. Lived in Italy and Spain to play Football. Joined Lei in 2022 after being inspired by Lei00

・Hobbies: Football, Padel, Movies, Reading, Anime, Running
・Favorite Music: Cumbia, Pop, Classical Music
・Favorite Manga: Slam Dunk, HUNTER HUNTER
・Favorite Athletes: Totti, Messi, Andy Hiraoka
・Favorite Alcohol: Sake, Wine, Aperol Spritz
・Favorite Foods: Oyakodon, Yakitori, Pasta, Asado
・Favorite Materials: Lacquer(Urushi) , Aluminum, Glass, Wood