
「概念を輸入したいと思ったんです」
オーガニックインポーター・真衣さんの仕事を象徴する言葉は、インタビューの早い段階で出てきました。
オランダのチーズ、アイルランドの海藻、バヌアツのチョコレート。扱う国も商品も異なります。
しかし、真衣さんが見つめているのは、商品そのものだけではありません。
生産者の姿勢。土地の背景。受け取る人の感覚。
そのあいだに立ち、遠い場所の価値を日本で育てていくこと。
輸入という仕事の奥にある、静かな判断と関係のつくり方について伺いました。
輸入したかったのは、商品だけではなかった

【真衣(まい)】
GnR株式会社代表取締役。オーガニックインポーター。オランダのチーズ輸入を原点に、アイルランドの海藻、バヌアツのチョコレートなどを日本へ紹介。食品そのものだけでなく、土地の背景、生産者の思想、受け取る人との関係を見つめながら、遠い場所の価値を日本へ届けている。
佐藤:真衣さんの活動内容を教えてください。
真衣さん:オーガニックインポーターとして活動しています。自分が好きなものしか輸入したくないというか、身体に良くて美味しいもの、人間や動物、環境にとって自然なものを扱っています。輸入業がメインなのですが、輸入する時は商品だけでなく、「概念」も持ち込みたいと思っています。
佐藤:輸入業に興味を持ったきっかけはありますか?
真衣さん:大学時代にオランダ人の友人がいたのですが、その子の実家が牧場だったことがきっかけです。遊びに行ったときに、馬も牛もヤギも、みんなすごくのびのび育っていたことが、とても印象的でした。
今でこそ、グラスフェッドやアニマルウェルフェアという言葉は少しずつ聞くようになりましたが、当時の日本では、乳製品にオーガニック認証がつくという考え方も、まだあまり知られていない時期でした。
そこで「ここのチーズを日本に広めたい!」と強く思ったんです。
佐藤:そこで初めて、食べ物の奥にある考え方に触れた。
真衣さん:そうですね。動物が過ごす広さや日照時間、食べるもの、抗生物質の扱いまで、細かい基準が定められていました。ただ食べ物として安全というだけではなく、動物をどう扱うか、どのように自然と人間社会を繋げるか、という考え方も含まれていたんです。
それを知ったときに、すごいなと思って。これを日本にも伝えたいと思いました。
100キロのチーズと、根拠のない自信

佐藤:未経験で輸入業の道に進んだんですよね。取引先はどのように見つけていったのでしょうか。
真衣さん:取引先の当てはありませんでしたが、先にチーズを100キロ分輸入してしまいました(笑)。
佐藤:100キロ。
真衣さん:家に業務用の冷蔵庫を買って、そこにストックする形で。営業先に行って、「いいですね、買いたいです」と言ってもらえたときに、すぐ出せないのが悔しかったんです。だったら、先に在庫を持ってしまい、欲しいと言われたときにすぐ出せる状況を作りました。
根拠のない自信から走り出してしまった感じです。
だいたい、根拠のない自信で生きていますが、当時は後先考えずに、勢いで勝負にでた感覚があります。
佐藤:そういう感覚が必要な時はありますよね。絶対にこれはいいと思う感覚が先にあって、あとから現実を追いつかせていくような。
真衣さん:自信に根拠をつけるためにも、まずは市場調査に行きましたね。私が当時扱っていたチーズと同じくらいの熟成期間のものが、どこでどの価格帯で売られているのかを見に行ったり。
一般的なスーパーでは価格が合わないと思ったので、結果的に少しハイエンドの売場に行きました。成城石井さん、日進ワールドデリカテッセンさん、ナショナル麻布さんなど。それでよさそうな売り場を見つけたら、電話でアポを取ったり飛び込みでご提案させていただいていましたね。
売場に行って、「乳製品の担当の方はいらっしゃいますか」と声をかけまくっていましたね。担当の方に繋いでいただくと、意外と話を聞いてくださることが多くて。
裏の棚や段ボールのそばで、立ち話のようにご提案することもありました。
佐藤:地道な作業ですね。
真衣さん:そうですね。でも、一つ決まると、そこから紹介が枝葉のように広がっていくんです。もちろんお断りいただくこともありましたが、そこが楽しくて続けられました。
出会いが、仕事を運んでくる

佐藤:真衣さんさんが扱っているものは、国の幅も面白いですよね。オランダ、アイルランド、バヌアツなど。どうやって見つけているんですか?
真衣さん:展示会にはかなり行っています。イタリアのオーガニック展示会、日本のFOODEX、地域ごとの小さな団体の展示会もあります。出会いの場に行くことが一番大切なので、先入観なく幅広いものを見るように意識していますね。
でも、最後の決め手は、こちらを向いてくれるか。
話している感じの心地よさだったり、相性を見て製品を決めています。作っているのも人間ですし、やり取りするのも人間なので。
佐藤:海藻も扱われていましたよね。商品の幅も豊富な印象です。
真衣さん:海藻は、アイルランドから輸入しています。海藻にもオーガニック認証があります。
たとえば、根から全部引き抜かずに手摘みすること。
大型客船が来ない海域であること。生活排水の影響が少ない場所であることなど、認証には細かなルールがあるんです。
「海藻にオーガニックの意味があるんですか」と聞かれることもありました。でも、きれいな海はどこにでもあるわけではない。汚染された海のものを食べたいですか、という話でもあると思います。
佐藤:バヌアツのチョコレートとは、どのような出会いだったのですか?
真衣さん:展示会で出会いましたね。バヌアツは小国なため、大手だったら、生産量や継続性を見て選ばないかもしれないと思ったんです。しかし私は、小さいからこそ、ニッチだからこそ、日本でもっと価値があるものにできるのではないか、と考えました。
現地も、ただ販売量を増やすことが目的ではないんです。
彼らの美味しいチョコを届けたいという気持ちが一番にある。女性の支援にも関わっている団体だったので、自分の仕事とフィットしたところも。
佐藤:国や商品だけで選んでいるというより、関係の質を見ている感じがします。
真衣さん:そうかもしれません。オランダは友人の実家の牧場。アイルランドの海藻は知人からの紹介。バヌアツは展示会で出会った人の情熱。
結局、全ては人との出会いで決まっていくと思うんです。
繋ぐこと以上の役割を

佐藤:商品のジャンルが違うと、仕事の感覚も違いますか?
真衣さん:全然違いますね。チーズやワインは、現地の生産者の芸術作品をそのまま届ける感覚です。生産者ごとにこだわりや情熱が様々なため、彼らの生み出すものをリスペクトして、そのまま使ってください、というもの。
一方でチョコレートは、日本のパティシエさんたちがいろいろ工夫してくださります。素材としてのご提案が多いのですが、そこで会話が生まれ、一緒に受け入れられるものを作り上げる感覚があります。
佐藤:会話が生まれる。
真衣さん:日本で作られたバヌアツチョコを使ったスイーツや一皿を、現地に見せることがあります。そうすると、現地の人たちもすごくワクワクしてくれる。
「こういうものになったんだ」「もっとこうしたら、より良いものができるかもしれない」
そういう反応が返ってくる。
それがとても面白いです。
佐藤:輸入が、一方向ではなくなるんですね。
真衣さん:そうですね。インポーターは、役割でいうと繋ぎ役。その繋ぎ役が、ただものを右から左に流すだけになってしまったら、存在価値が揺らいでしまうと考えています。そこで、生産者が想定していない使い方を日本でご提案できたり、日本の意見を生産者側が汲み取ってくれたりすると「自分がいた意味があったな」と感じることがあります。
どちらにも寄りすぎないために

佐藤:仕事をするうえで、一番大事にしていることはありますか。
真衣さん:私は繋ぎ目なので、サプライヤー側と、買ってくださる側のバランスをすごく気にしています。
仕入れ値をできるだけ下げて日本が喜ぶ価格で提供しても、現地のためにはならない。
逆に、現地に寄り添いすぎても、日本のパティシエさんや使い手の声を拾えなくなってしまう。
ここのバランスをどう取るか。
片方に寄り添いすぎると、どちらの産業としても成り立たなくなってしまうんです。
どちらからの要望も全部そのまま通すわけではなく、お互いを守るために、最初から正直ベースで対話を重ねることを意識しています。
佐藤:本音を言ってもらえる関係になるまでには、時間もかかりますよね。
真衣さん:そうですね。四年、五年続けて、ようやく見えてくることも。何よりも、実際に顔を合わせて話すことが大事だと思っています。今は何でも簡単にやり取りできるけれど、人と顔を合わせて時間を共有することは、やっぱり大切かなと痛感しています。
佐藤:今後、挑戦したいことはありますか。
真衣さん:まずは、安定供給ですね。日本側が困らないように届け続けること。あとは、現地から「この製品どうですか?」とか「新しい製品ができた」と枝葉のように話が出てくることがあるので、そういう時に、ちゃんとイエスと言える余力を持っていたいです。
新しい国も、出会いがあれば行くつもりです
ただ広げるというより、自分がきちんと関われるものを扱い続けたいですね。
佐藤さん:LeiのKUON Perfumed Liquid Soapも使っていただいていますよね。最初に触れたときの印象や、洗い流した後の感覚はいかがですか。
真衣さん:LeiのLiquid Soapは、日中の気分を切り替えたい時に使っています。家で作業をした後や映画を見る前など。優しく透き通るような香りのおかげで、気分が癒されて穏やかな気持ちになりますね。次の動作へ自然と移行できる感覚があります。
編集部ノート
ものが移動する。
遠い土地と、日本の食卓。
素材と、それを扱う人の手の感覚。
真衣さんの話を聞いていると、輸入とは、単に遠い国の商品を日本へ持ってくることではないように思えてきます。
どちらか一方に寄りすぎるのではなく、そのあいだで耳を澄ませること。輸入という仕事の奥には、ものを運ぶだけでは見えてこない、静かな調整がありました。
土地と土地のあいだに、新しい会話を生むこと。
その循環の途中に、真衣さんは立っています。
香りもまた、人と人との関係を作るものなのかもしれません。
真衣さんの気分を切り替えるLiquid Soap
真衣さんInstagram:https://www.instagram.com/mai_islands/
GnR株式会社HP:https://gnr-japan.com/
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