
2026年5月23日(土)・24日(日)、Lei In Praise of Shadows Flagship Storeにて、インテリアブランドKEIVの展示を行います。
KEIVが掲げる言葉は、「百景創造」。
今回のLei Journalでは、KEIVの代表でありプロダクトデザイナーの鴨志田さんに、ものづくりの原点、KEIVの思想、そして展示で触れていただきたい景色について伺いました。
暮らしに触れるものをつくる

【鴨志田栄汰(かもしだ・えいた)】
KEIV代表・プロダクトデザイナー。さまざまなブランドの生活用品やキャンプ用品、家具などの企画・デザイン・設計・量産管理を手がける。日常に触れるものを通して、暮らしの中に新しい景色を生み出すことを探求。2026年にインテリアブランドKEIVを立ち上げ、「百景創造」を掲げて活動している。
佐藤:まず、鴨志田さんの活動について伺えますか。
鴨志田さん:インテリアブランドKEIVのデザイナー兼代表を務めつつ、個人デザイナーとしても活動しています。2022年の10月に立ち上げた個人事務所では、生活用品やキャンプ用品を中心に、商品の企画からデザイン、設計、量産管理までを行っています。
今はその活動と並行して、自分が思い描いている新しい暮らしのあり方を発信するブランドとして、2026年4月にKEIVをローンチしました。
佐藤:生活用品、キャンプ用品、家具など、扱う領域は広いですよね。鴨志田さんの中で、特に大事にしている軸をお聞きしたいです。
鴨志田さん:一番関心があるのは、日常生活です。人が人生を営んでいく中で、多くの時間を費やすのは、家の中であったり、食事の時間であったりすると思っています。そういう時間こそ、もっと豊かに、心地いいと思えるようにしたいですね。
なので、特定のジャンルにこだわりはありません。家具でも生活用品でも、ものではない何かでも、日常に触れるものを生み出していきたいと思っています。
佐藤:デザイナーを志したきっかけは何だったのでしょうか?
鴨志田さん:祖父が家具職人だったことがきっかけですかね。
埼玉に工場があって、小さい頃からそこに出入りしていました。ものづくりが間近にあったんです。
人々の暮らしを支えている祖父は、とてもかっこよかった。
制作風景や素材との向き合い方も、祖父と交わした言葉も、自分にとって大きな原体験として残っています。
佐藤:ものづくりが、かなり近い場所にあったんですね。
鴨志田さん: そうですね。ただ、デザイナーという職業を知ったのは、小学生の頃に読んだ本がきっかけでした。祖父の影響もあり、絵を描くことや図工が好きだったので、少しずつ、ものをつくる仕事に興味を持つようになっていきました。
大学に進学して、インターンに行ったり、本気でデザインをやっている人たちに触れたりする中で、自分もこの世界でやっていきたいと思うようになりました。その経験の中で、ただ美しい形を描くことや造形の力だけではなく、企画から最後にお客さんに届けるところに触れさせてもらえた経験がとても楽しかったんです。
ものが生まれる前の企画、設計、価格、伝え方、全てがつながっていることを学びました。
自分が考えた暮らしのあり方を、ちゃんと形にして、ちゃんと届ける。
そこが、KEIVでも個人としての活動でも、大切にしたい考え方の基盤になっています。
かたちの前に、「なぜ」がある


佐藤:デザインをするときに、大切にしていることはありますか。
鴨志田さん:まずは、「これは何であるか」ということから考え始めます。目新しいものをつくりたいわけではなくて、それがあることで、使う人の暮らしに何が起きるのか。
どんな気づきが生まれるのか。そこを言葉にすることを大切にしています。
佐藤:かたちより先に、そのものが存在する理由を考える。
鴨志田さん:そうですね。かたちや機能、設計、価格は、すべてその理由を届けるための方法だと思っています。最初の核が曖昧なままだと、見た目が整っていても、暮らしの中には残らない。逆に、核がはっきりしていれば、何を残して、何を削るべきかが見えてきます。
佐藤:工業デザインには、制約も多いですよね。
鴨志田さん:そうですね。素材、価格、量産。考えられることはいくらでもありますが、実際には条件があります。たとえば、金属の板がもっと自由に曲がればいいのにと思っても、自分だけの力ではどうにもならない。素材を開発する人や、工場の技術も関わってきます。
その中で、かたち、機能、価格、情報をどう組み合わせるか。
そこが面白さでもあり、苦しさでもありますね。
佐藤: 制約があるからこそ、最初の理由が必要になってくるのでしょうか。
鴨志田さん:そう思います。何を核にするのかが曖昧だと、条件に引っ張られてしまいます。価格を優先するのか、かたちを優先するのか、使いやすさを優先するのか。
判断の軸がないと、最後に何をつくっていたのか分からなくなる。だから、最初に「これは何なのか」を考えることは、最後までぶれないための軸でもあります。価格や、使う人にとっての分かりやすさ、どう伝えるかまで考えないといけない。
ものは、できあがった瞬間に終わるわけではありません。使う人の手に渡って、暮らしの中で使われて、そこで初めて意味を持つと思っています。
手を動かすことで、景色は変わる

佐藤:KEIVのコンセプトに「百景創造」という言葉がありますよね。この言葉には、どういう意味が込められているんですか?
鴨志田さん:いろいろな人に触れること。いろいろな景色を見に行くこと。いろいろな価値観に出会うこと。そういう経験の中で、今まで自分が見えていなかったものに気づける。
その感覚から、この言葉を据えました。自分がつくる道具を通して、日々の見え方を少しだけ面白く変えていきたいと思っています。
たとえば、靴が増えてきたら棚の段数を変えてみる。
本に興味が出てきたら、本を置けるようにする。
ものの場所を変えてみる。
暮らしが変わるたびに買い替えるのではなく、今ある自分のスタイルや価値観との関係を変えていく。そういう使い方ができるインテリアをつくり続けたいですね。
佐藤:家具が固定されたものではなく、暮らしに合わせて動いていく。
鴨志田さん:そうですね。家具って、基本的には動かないものだと思うんです。
でも、暮らしはずっと変わっていきます。
年齢も、興味も、部屋で過ごす時間も変わっていく。
だから、家具の側にももう少し変化できる余地があっていいんじゃないかと思いました。
佐藤:そこに、キャンプ用品の経験がつながっているんですよね。
鴨志田さん:はい。キャンプ道具には、変形したり、畳めたり、拡張できたりする機能があります。外で衣食住をつくるための道具なので、動きやすさや可変性がすごく考えられている。ただ、そのまま家の中に持ち込むと、どうしても最適解ではなくなる。
だから、キャンプ道具が持っている機能を、家具としてもっと静かに表現できないかと考えました。
簡単に動かせる。
変えられる。
1秒でできる模様替えのようなイメージです。
「シンプルなのに、自由にアレンジできる」という、ギャップのあるデザインを目指したかった。使う人が手を動かすことで、部屋の見え方が少し変わる。
その変化の中で、自分でも気づいていなかった使い方や、興味に出会うことがある。
そういう余地を、暮らしの中につくれたらいいなと思っています。
景色に触れる、二日間

佐藤:2026年5月23日(土)・24日(日)、フラッグシップストアにてKEIVの展示を行います。今回、どのような場にしたいですか。
鴨志田さん:来てくださった方とは直接お話しできたらと思っています。ものだけを見るのではなく、なぜこのかたちになったのか、暮らしの中でどう変化するのかを、実際に触れながら感じてもらえる時間にしたいです。
線の細さ、影の出方、手を動かしたときに景色が変わる感覚。
そこは、実物に触れて初めて伝わる部分。
佐藤:今回の展示では、ワイヤーで構成された軽やかなシェルフ(LU5シリーズ)や、竹の素材感を活かした可変性のあるプロダクト(EP40シリーズ)をご覧いただけます。実際に置かれた状態で見ることで、空間との関係も感じられそうですね。
鴨志田さん:そうですね。製品単体というより、その場所に置かれたときにどう見えるのか。そこを見てもらいたいですね。
暮らしの中で景色を変えるということは、大きく何かを変えることではなく、少し手を動かして、見慣れた空間との関係を変えてみることでもあると思っています。
自分の部屋ならどう使えるか。
今ある空間に、どんな余白をつくれるか。
その想像を、実物に触れながら確かめていただける二日間になればと思っています。
編集部ノート
家具は、空間を埋めるためだけのものではないのかもしれません。
置き方を変える。
使い方を変える。
そこにあるものとの距離を、少しだけ変えてみる。
その小さな動きの中で、見慣れた部屋にも、まだ知らない景色が立ち上がる。
2026年5月23日(土)・24日(日)、フラッグシップストアにて、KEIVの展示を行います。実物に触れながらご覧ください。
KEIV Exhibition
日程:2026年5月23日(土)・24日(日)
時間:12:00〜19:00
会場:Lei In Praise of Shadows Flagship Store
Instagram:https://www.instagram.com/keiv_official/
HP:KEIV
在廊:鴨志田さん在廊予定
※展示品は、会場にて購入についてもご相談いただけます。
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Lei Journal
語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。
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Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。
