語られなかった背景。明るさの裏側にあるもの。
そうした部分に目を凝らすことで、はじめて立ち上がる価値もある。
Leiは、「陰翳礼讃」という考え方を通して、ものや空間だけでなく、
ブランドや人の在り方にも向き合っていきたいと考えています。
私たちのインタビュー記事では、その思想に共鳴するブランドや人々の仕事、そして生き方を、静かに掘り下げていきます。
着物を「少し特別な日の一着」として日常に提案するブランド|[Lei Incense Collectionお取扱店]

今回お話しを伺ったのは、新宿に店舗を構える着物浴衣ブランド「巧流-call-」。着物を日常的な選択肢の一つとして提案し、ワードローブの中に「選べる一着」として置くことを目指している。タキシードほどではない、けれどカジュアルすぎもしない。そんな場面で、着物という選択肢が自然に立ち上がるように。
代表の元山巧大さんは三代続く和裁家に生まれ、和裁技能士として修行後、日産の営業職として約4年間、社会を経験。東京で立ち上げた巧流-call-では、着物ではなく飲食を入口にするという逆転の発想で、装いと日常の距離を縮めている。
着物も、香りも、ただ身につけるものではなく「まとう感覚」。
この記事では、巧流-call-というブランドが大切にしている価値観と、その背景を辿る。
飲食との掛け算で「着物」を選択肢のひとつに

【元山 巧大(もとやま こうだい)】
長崎県出身。着物浴衣ブランド「巧流-call-」代表。三代続く和裁家に生まれ和裁技能士として修行し、日産でカーディーラーとして営業職を経験した後、弟と巧流-call-を創業。着物×飲食の空間設計で、和服を「少し特別な日に選べる一着」として提案している。
佐藤: まず「巧流-call-」について、どんなブランドか教えてください。
元山さん:「もっと自由に、もっとかっこよく、もっと可愛く」をテーマに、その人だけの着物・浴衣の仕立てとレンタルをしています。タキシードほどではないけどカジュアルすぎもしない場面で、「スーツにするか着物にするか」と選べる着物を作りたいんです。普段着に戻すというより、ワードローブに自然に並ぶ世界を目指しています。
佐藤:着物と飲食が一緒のスタイルが印象的でした。なぜこの形に?
元山さん:着物屋って「今度遊びに来てください」と言っても、来てもらうのが本当に難しい。ハードルが高いんですよね。
そこで最初は集客のために、初期のお客様やまだお客様じゃない方を集めて月一で飲み会をしてました。着物屋じゃなくて飲み屋だと皆さん来てくれる。
そこから、銀座のコリドー街にある知り合いのバーに「週一で場所貸すから、バーやってみない?」って声をかけてもらって試したら、想像以上に人が来てくれて。入口は飲食でいいな、と確信しました。
佐藤:今の店舗も最初からこの構想だったんですか?
元山さん:そうです。実は1階にトイレを作ってないんですよ。
必ず2階に上がってもらう。そうすると着物が目に入り、「2階のあれ何ですか?」って聞かれる流れが自然とできる。
押し付けずに、着物への興味が立ち上がる入口を作りたかったですね。
「きっかけがない」まま始まった、職人への道

佐藤:元山さんは和裁技能士の資格も持っていますよね。
もともと、着物をやろうと思ったきっかけは何だったんですか?
元山さん:きっかけは特になくて(笑)。父が和裁の職人で、三代続く和裁所をやってました。家の隣に寮があって職人さんが寝泊まりして修行していて、小さい頃からそれを見てたので、着物がずっと身近だったんです。
佐藤:自然すぎて、という感じですね。
元山さん:そうなんです。高校は進学校で大学に行くつもりだったのですが、進路を考えるとき父に「家業を継いだ方がいいかな?」って聞いたら、「継いでくれたら嬉しいね」って初めて言われたんです。
それで、じゃあ一旦やってみようか、くらいで職人の道に入りました。
手に職はなくならないし、他にやりたいことができたらその時考えればいい、って。
家業の倒産と、4年間の「営業経験」がつくった、巧流-call-の土台

佐藤:それからは、ずっとお父様のもとで?
元山さん:一度父の元を離れて職業訓練校で学びました。卒業した後に父の元に弟子入りするのですが、僕が和裁技能士の国家資格をとったタイミングで、父の会社が倒産してしまったんです。
佐藤:え?
元山さん:もう、どうしようもない状況でした。
僕が名前を貸して規模を縮小し、着物仕立て屋としては続けましたが、職人も減っていくし、賃金も高い仕事ではない。父にも「この業界、この先は厳しいぞ」って言われて。
佐藤:そこで、どうなさったんですか?
元山さん:一度、職人を辞めました。それまでは、着物屋から送られてくる反物と寸法表をもとに仕立てて返す、受託の仕事をしていたのですが、技術はあっても、未来が描きにくい現実が突きつけられましたね。「残すこと」そのものより、「続けられるかどうか」が問われる局面で。
佐藤:そんなご経験をされているにも関わらず、着物の世界に戻ってこられた。一旦職人を辞めてからは、どんなことを?
元山さん:日産でカーディーラーとして車の営業をしてみました。
ものを作る世界しか知らなかったので、一度、社会に出てみたかい気持ちはどこかにあったんです。人と話すのも好きでしたし、営業のスキルは、今後何をするにも役に立つと思って。
佐藤:この「4年間の営業経験」が、後の巧流-call-に大きく影響することになるんですね。
元山さん:間違いないですね。多くのお客様と関わる中で、どのように話すと商品の良さが相手に伝わるか、を一番学べました。どう売るかより、どう入ってもらうか。その視点は、ここで身についたと思います。
香りはファッション

佐藤:毎日開店前にお香を炊くとおっしゃっていましたが、元々香りものはお好きなんですか?
元山さん:そうなんです。お香はかれこれ地元にいる時から焚いていますね。お香って、香る時間が限られているところが良いなって。ずっと香りが残らない分、場所の雰囲気や気持ちを一瞬で変える力があると思っているので、切り替えの儀式的な意味合いで使っています。
佐藤:燃焼時間という制約がある分、より香りは感じやすいですよね。場の雰囲気や気分を変えるのには、ちょうど良い時間の長さというか。
元山さんの中で「香り」って、どんなものですか?
元山さん:僕の中では、香りはファッションです。着物と同じで衣装の一つとして考えています。香りって、人の気分変えたり雰囲気を作りだす要素としてかなり大きいな、と。
いい匂いの場所や人って、なんか記憶に残るし、何より粋ですよね。
佐藤:Leiのお香をお取り扱いいただきありがとうございます。Leiの香りのどこが好きですか?
元山さん:お香すぎず、アロマすぎず。線香にも寄り切らない、ちょうど真ん中を取っている感じが、すごくいい塩梅だなと思いました。
佐藤:本日はインタビューありがとうございました。
編集部ノート
巧流-call-の空間で語られていた「飲食と着物を一緒にしたら面白いんじゃないか」、「香りはファッション」という言葉は、ライフスタイルとは瞬間の選び方でできているという真実を、静かに思い出させてくれます。
この記事の中で触れられていた香りも、同じ考え方の延長線上にあります。
「今の自分に、どんな空気をまとわせたいか」考える瞬間に、Leiのお香に触れてみてはいかがでしょうか。
カジュアル着物浴衣ブランド 巧流-call-
〒162-0067 東京都新宿区富久町16−14
03-6380-1017
WEB:カジュアル着物浴衣ブランド巧流-call-
Instagram:https://www.instagram.com/call_kimono/
