Lei Journal
語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。
静かな重心を持つ人や空間に目を向けることで、はじめて見えてくる価値があります。
Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。
「澄み藤」オーナー 須藤 寛紀さん Lei ユーザーインタビュー

目の前で火が入る音と、手元の所作が心地よく残る距離感。
鉄板焼き「澄み藤」は、高級に振り切らず、お好み焼きにも寄せない——その“中間”に立つお店です。
今日は、その立ち位置がどこから来たのか。須藤さんの歩いてきた道と、店の重心の置き方を聞きました。
程よい”中間”の立ち位置をつくる

【須藤 寛紀(すどう・ひろき)】
鉄板焼き「澄み藤」オーナー。和食や焼き鳥の現場で経験を重ね、鉄板焼きへ。高級に寄せすぎず、カジュアルにも崩しすぎない“中間”の立ち位置を掲げ、記念日だけでなく普段使いできる店をつくる。カウンター越しの距離感と、空気の重心を大切にしている。
佐藤:澄み藤」について、どんなお店か教えてください。
須藤さん:鉄板焼き屋です。鉄板焼きって、高級なイメージか、お好み焼き寄りのイメージか、わりと両極端に見られやすいと思っていて。
高級に行き過ぎず、お好みにもしすぎず。その”中間”にいる店をつくりたいな、と思いました。
佐藤:その“中間”って、具体的にいうと?
須藤さん:高級店とカジュアル店の中間ですね。記念日だけの店じゃなくて、普段使いでも来られる。そういう立ち位置です。
佐藤:なぜ“中間”を狙おうと?
須藤さん:どちらかに寄りすぎると、お客さまの層も偏ってしまいます。偏りすぎない方が、自分たちとしては面白い。いろんな人が来られる店でいたいな、って。
佐藤:カウンターの距離感が、店の空気を決めている感じがします。
須藤さん:僕自身、カウンターが好きなんですよね。目の前で、お客さまの表情が見える。好みも聞きながら、少しずつ調整できる。最初のドリンクから会話まで含めて、料理が成立していく感じが好きなんです。
鉄板焼きに賭けた理由

佐藤:ずっと鉄板焼き屋さんをされていたんですか?
須藤さん:ずっとではないです。和食で修業したり、焼き鳥のお店で修業したり。
ただ、和食のお店って本当にたくさんあるじゃないですか。そこで自分が和食のお店を出して勝負するイメージが、当時あまり持てなくて。
佐藤:“好き”だけじゃなく、勝負の場所として見ていた。
須藤さん:そうです。鉄板焼きなら、和食や焼き鳥でやってきたことも活かせるし、目の前で料理を見ながら食べる、っていう体験もつくれる。
カウンターで、目の前で起きていることがそのまま価値になるのが、鉄板焼きの強さであり魅力かなと。そこでチャレンジしたいと思いました。
佐藤:和食の技術が、鉄板の上で別の表情になる感じがあります。
須藤さん:和食の繊細さは残しつつ、鉄板の“勢い”も出せる。
畏まるというより、きちんとしているけど、肩の力を抜いて楽しめる。
そのバランスを出し続けたいですね。
料理人になるまで

佐藤:そもそも、飲食の世界に入ったのはどのタイミングだったんですか?
須藤さん:最初から料理をしていたわけじゃないんです。学生の頃は遊びながら別の仕事もしていて。そこからある時「このままじゃいけないな」って漠然と思った時期があって、その時に飲食の道に進むことに。
佐藤:最初から“独立するために”というより、まずは手を動かして積み上げていった。
須藤さん:そうですね。料理人としてスタートした時は、独立なんて全く考えていませんでした。飲食店に携わるきっかけは、高校時代のアルバイトから。そこから料理を作ることに興味を持ち、修行をスタートしました。
佐藤:そこからどのようなきっかけがあり、独立されることに?
須藤さん:お客さまからの素直な「これ美味しいね」というお言葉が増えてきた時ですかね。修行中の身でしたが、お客様の反応を見ながら改善を重ねたりしていたんです。改善したことや自分の料理でお客様の表情を緩むのを見るのがたまらなく嬉しくて。
そこからは、「将来自分のお店を持てたらな」と漠然と思うように。それが続いたある時ふと、知り合いから「面白い物件があるんだけどお店出すの興味ない?」と連絡をもらったんです。
そこからとんとん拍子で話しが進み、最初は赤坂でお店をオープンすることに。準備して計算に計算を重ねた訳ではなく、チャンスに飛び乗った感覚でしょうか。
国境を超えて、鉄板焼きを楽しめる空間を

佐藤:最近、海外のお客さまも増えていると聞きました。
須藤さん:昨年9月に一度、値上げをしたんです。値上げした後って、だいたい2〜3ヶ月は売上が落ちたりするんですけど、ちょうどそのタイミングで韓国の有名なYouTuberの方が来てくれて、紹介してくれました。そこから韓国からのお客さまが増えましたね。
佐藤:偶然に見える出来事でも、店側に“受け皿”がないと繋がらない。
須藤さん:でも、海外のお客さまが増えたからって、そこだけを向いていたら長続きしないと思っています。インバウンドだけの店にならないように、国内の流れも見ながら店の動きを合わせています。日本の方にも海外の方にも「鉄板焼き」を楽しんでいただきたい。
佐藤:重心は変えない。
須藤さん:変にターゲットを絞る、みたいなことはしたくなくて。自分たちが美味しいと思うものを、きちんと出す。
その上で、日本のお客さまも海外のお客さまも、バランスよく楽しんでいただけるのが理想です。
香りは“流れの演出”

佐藤:「店の空気づくり」という意味で、お手洗いに置いていただいているLeiのcard diffuserについても聞かせてください。香りを選ぶときの懸念はありましたか?
須藤さん:強すぎる香りは置きたくないな、ってずっと思ってました。飲食店だと、香りが料理を邪魔した瞬間に、印象が変わってしまうので。
佐藤:card diffuserを、選んだ決め手は?
須藤さん:いくつか試したけど、Sea breeze Oudが一番しっくりきました。主張しすぎない広がり方がいい。食事の途中でお手洗いに入っても、気持ちが途切れないというか、程よい“休憩”として気分が変わる感じが気に入りました。
佐藤:お客様の反応はいかがですか?
須藤さん: デザインのことや、「香りが優しいね」って言っていただくことがあります。お手洗い休憩は“香りで良く見せる”というより、“流れと空気を崩さない”ことが大事かなと。
佐藤:本日はインタビューありがとうございました。
澄み藤で使われている香り
澄み藤
所在地:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町12−5
Instagram:https://www.instagram.com/sfj0717/
編集部ノート
偏らず、押しすぎない。
須藤さんが語ったのは、派手さではなく“重心”の話でした。カウンター越しの距離感のなかで、料理の所作と会話の温度が整っていく。
そこに香りは、「演出」ではなく“空気を崩さないための設計”として置かれていました。
