Lei Journal
語られない背景。
明るさの裏側にあるもの。
静かな重心を持つ人や空間に目を向けることで、はじめて見えてくる価値があります。
Lei Journalでは「陰翳礼讃」という考え方を手がかりに、人、空間、仕事の在り方を記録していきます。
「17h -セブンティーンエイチ-」代表 hayato(ササハラ ハヤト)さん インタビュー

幼い頃に触れたものが、その後も静かに残り続けることがあります。
hayatoさんと話していると、かつてのエンターテインメントの記憶と、
いま向き合っている表現が、一本の線でつながっているように感じられました。
映画館の記憶から始まった

【hayato(ササハラ ハヤト)】
映画監督・映像作家。映画、MV、CMなどの映像演出を手がける。学生時代から自主映画制作を続け、2022年にクリエイティブ集団【17h -セブンティーンエイチ-】を立ち上げた。
佐藤:映像の道に進もうと思ったきっかけを教えてください。
hayatoさん:これがきっかけ、と言える具体的なエピソードはないんですけど、振り返ると、幼少期の時間は大きかったんだろうなと思います。
佐藤:どんな時間だったんですか?
hayatoさん:父が居酒屋をやっていて、仕事柄、普段はあまり一緒にいられなかったんですよ。僕が起きる頃には寝ていて、帰ってきても仕事に出ている。父と一緒に過ごせるのは日曜日だけ、という生活でした。
その日曜日によく映画館へ連れて行ってくれていたんです。
佐藤:その時間が、今も残っているんですね。
hayatoさん:そうですね。出身地が田舎だったので、小学生にとって映画館に行くこと自体がかなり貴重な体験でした。しかも往復3時間ほどかかるので、映画を見に行くこと自体がもうワクワクだったんです。
暗い場所に入って、そこで時間を過ごして、物語に触れる。作品そのものだけじゃなくて、その場所にいくこと自体が記憶に残っています。
佐藤:映画以外にも、触れていたものはあったんですか。
hayatoさん:今だから思うんですけど、あの頃触れていたのは、その時代の大きな作品ばかりだったんですよね。東京のようにいろんな映画に触れられる環境ではなかったので、自然と広く届く作品を見ていたんだと思います。
あの頃の記憶が、自分の中のベースになっている気がします。
中学の卒業アルバムの将来の夢を書く欄には「映画監督になる!」と書いていました。今振り返ると、それくらい大きなものだったんだと思います。
“目指す前”から、つくることは続いていた

佐藤:そこから実際に、ご自身で映像を撮り始めたのはいつ頃だったのでしょう?
hayatoさん:小学生の頃ですね。 今みたいにスマートフォンがある時代ではないので、コンパクトデジタルカメラの録画モードで撮っていました。
編集も独学で行っていましたね。Windowsに入っていたソフトを使って、見よう見まねで。 今思えばすごく手探りだったんですけど、それでも面白かった。
佐藤:その頃は、どんなものを撮っていたのでしょう。
hayatoさん:最初は自分が出る側でもありました。友達とカメラを回して、それを後で見るだけでも面白かったし、トイ・ストーリーのパロディみたいなものを撮ったり。当時は何かを目指すというより、単純に面白いからやっていたという感じですね。 いいものを作ろうとするより、撮ること自体が楽しかった。だから続いていたんだと思います。
佐藤:その感覚のまま、中学、高校へと続いていく。
hayatoさん:はい。中高も基本的にはその延長でした。
高校になると、部活終わりに友達を集めて学生ドラマのようなものを撮って、上映して、また次を撮る、ということをずっとやっていました。最終的には文化祭で上映する作品も作っていました。その頃になって、ようやく少しずつ“作品”として考える部分も出てきたと思います。
いま、何をつくり、どこへ向かおうとしているのか

佐藤:ここまでのお話を伺っていると、映像をつくること自体は一本で続いていて、その中で形が変わってきた印象があります。
今は、どんなものをつくっていますか。
hayatoさん:映画、ミュージックビデオ、CM、SNS映像、ドキュメンタリーと、かなり幅広いと思います。でも、自分の中ではそこまで別のものとしては捉えていなくて。どれも、映像をどう立ち上げるか、どう届けるか、という意味では地続きなんです。
佐藤:その中で、いま特に向かおうとしているものはありますか。
hayatoさん:ありますね。短編やCM、SNS映像などの映像を撮ることが多かったので、長編映画やMVに、もっと重心を移していきたいと思っています。
それらの作品の中で、感情の動きや空気感のような、目に見えづらい部分の表現を突き詰めたい。人の本能に触れる映像を届けたいんです。
佐藤:なぜ今、そこへ向かおうとしているんでしょうか。
hayatoさん:たぶん僕は、現状維持を嫌っているんです。
今の自分にできることを続けるだけでも仕事にはなると思うんですけど、それでは自分が求めているところには届かない。そのままでいたくない感覚があります。
ネガティブな義務感というより、作りたいものの理想が高いからこそ、そのために必要な経験の方へ自然と向かっているんだと思います。
なくても生きていけるものを、なぜつくるのか

佐藤:hayatoさんにとって、映像とはどのようなものですか?
hayatoさん:映像作品とかエンターテインメントって、究極なくても生きていけるものだと思うんです。食べることや日々暮らすことに比べたら、必須ではない。
だからこそ、作る側はその意味を考えていなきゃいけない。僕自身、作品をつくるときは「どれだけ人の本能に近づけるか」ということをいつも考えています。
佐藤:なくても生きていける。でも、ない方がいいとは思っていない。
hayatoさん:そうですね。むしろ、そういうものがなくなってしまうと、人って貧しくなると思うんです。大変な時や辛い時こそ、映画や音楽に救われることってあると思うんですよね。エンターテインメントに触れたからといって、人生がすぐ変わるわけではない。でも、もう少し頑張ろうと思えるきっかけにはなりうる。
僕はその小さなきっかけを信じています。
佐藤:hayatoさんのお話を伺っていると、前に進むこと自体が目的というより、その先にある“届き方”について考えているような印象を受けます。
hayatoさん:終着点は見る人なんですよね。自分が作ってみたい映像はありますが、一番重要なのは、映像を見た人の心に残ったか。映像は、それ自体が目的ではなくて、届けるための手段なんです。
香りは、見えない自己表現

佐藤:最後に、香りについても伺わせてください。Lei Incense Collectionは、どんな時に焚いていますか?
hayatoさん:何か特別な時というよりは、日常のふとした瞬間に焚くことが多いですね。動きや気分を切り替えたい時によく焚きます。再起動したい時というニュアンスがしっくりくる気がします。香りはHany Amberを選びました。
店頭でいくつか試したときに、実際に焚いたときの空気を想像して、この甘さが自分の部屋に合いそうだなと思ったんですよね。
佐藤:香りのものは、もともと好きだったんですか?
hayatoさん:そうですね。古着屋に行くのが好きなんですが、お香を焚いているお店が多くて。気になる香りを調べたりしながら、自分でもいろいろ試すようになったのが最初のきっかけです。自分が「カッコいい」と感じる空間には香りがあることが多くて、香りも表現のひとつなんだなと思うようになってからは、かなり身近なものになりました。
佐藤:香りものの中でも、お香はどのような立ち位置ですか?
hayatoさん:インテリアのひとつだと思っています。部屋全体のデザインや整い方があって、それぞれのものがあるべき場所にある、という感覚に近いです。
香りが部屋の雰囲気と合っていることはもちろん、どう置かれているかも含めて大事だと思っています。
佐藤:空間全体との関係の中にある、という感覚でしょうか。
hayatoさん:そうですね。自分にとっては、香りだけを取り出すというより、部屋全体のあり方の中にあるもの、という感覚に近いです。
何を着るかと同じように、どんな香りをまとうかも、自分の印象や空気をつくるものだと思っています。見えていないけど、自己表現の一部としてあるものなんだと思います。
佐藤:本日はインタビューありがとうございました。
編集部ノート
映像のことを話すときも、香りのことを話すときも、hayatoさんの中には一貫して「見えないものを見る視点」がありました。
心に触れるために、どう見せるか、何を置くか。
その感覚は、作品にも、日々の部屋にも静かに通っているようでした。
hayatoさんが選んだお香はこちら
Instagram: https://www.instagram.com/hayatosasahara/
Web:17h -セブンティーンエイチ-
-新作短編映画『ボクと鹿』が配信中-
・Amazonプライムビデオ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FDVJDBTG/?tag=
・FOD:https://fod.fujitv.co.jp/title/718l/
・Hulu:https://www.hulu.jp/mirrorliar-films-season6
